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Global Strategy in the New Era of Knowledge Manufacturing <Global Bridge Conference 2025 Digest

2026年12月12日(金)に、Global Bridge Conference 2025を開催しました。本稿では、セッション3Making Japan the Center of Knowledge Manufacturing - Implementing the Inbound Globalization Conceptについて、セッションの再録をお送りします。

人口減少とデフレからの脱却が叫ばれる日本経済。この難局を乗り越え、持続的な成長を実現するためには、新たな戦略が必要だ。本セッションでは、地域の産業創出に着目し、域外からの企業誘致に留まらず、海外ベンチャーが持つ革新的な技術を地域の企業が取り込み新たな価値を生み出す「インバウンドグローバライゼーション」について議論した。地方自治体、モノづくりの現場を担う中堅企業、そして国の政策を推進する金融庁。異なる立場のキーパーソンが、その実践例や現場で直面する文化的なギャップ、そして日本に知識が集まり新たな知識が生まれる中心地となるロードマップを、熱くそして闊達に語り合った。

speaker
・茨城県 営業戦略部 国際渉外チーム グループリーダー 青山 悠 氏
・KOBASHI ROBOTICS株式会社 知識製造部 スペシャリスト 稲田 和也 氏
・金融庁 総合政策局参事官 島崎 征夫 氏

モデレーター
・株式会社リバネス 執行役員 塚田周平

■海外企業の誘致から、知識の獲得へ:地方創生の最前線

リバネス 塚田周平:いよいよ最後のセッションです。ここまで残っていただいた方は、ある意味「勇者」だと思っています(笑)。最後までお付き合いください。 私はリバネスの塚田と申します。農学出身で、最近は虎ノ門でフードテックをテーマに、グローバルな結節点をつくるプロジェクトを始めたりしていますが、基本的にはドメスティックな人間です。しかし、今日掲げている「日本を知識製造業の中心地へ」というテーマにおいて、このインバウンドグローバライゼーションは戦略の核になると確信しています。 知識と知識を組み合わせ、新しい知識を作る。その行為自体を「業(産業)」にする。日本には資源がありませんが、「知識」こそが唯一の資源です。外から知識を入れ、中で拾い上げ、どう産業にしていくか。今日は自治体、企業、国、それぞれの目線で考えていきたいと思います。

本セッションの前に、まさに今、日本進出にチャレンジしている海外ベンチャーからのピッチがありましたが、島崎さん、お話を聞いてどうお感じになりましたか?

金融庁 島崎 征夫:プレゼンテーションをされた海外企業の皆さん、本当にお疲れ様でした。素晴らしい技術で社会を前に進めようとしている姿を見て、非常に刺激を受けました。 私は今金融庁におりますが、塚田さんやリバネスの皆さんとは、2015年に私が熊本県に出向していた時から10年ほどのお付き合いになります。当時、地方でも東京に負けないことができるはずだ、と思っていました。でも実際は、どの自治体も「大きな企業を外から誘致すること」ばかりを考えていた。それ自体は悪くないのですが「それだけでいいのか?」という疑問がありました。そこでリバネスさんと一緒に、地元熊本からベンチャーを育てる「熊本テックプランター」を立ち上げたんです。

塚田:ありがとうございます。熊本といえば今やTSMCの進出で注目を浴びていますが、今日は、単なる「誘致」ではなくいかに海外の知識を日本の産業に組み込むか、という話を深掘りしていきたいです。

金融庁 島崎 征夫 氏

■茨城県の「01支援」と、ベトナムベンチャーが地場の中小企業をパートナーに選んだ理由

塚田:茨城県の青山さんとは、昨年からリバネスと一緒に事業(令和7年度 進出有望外国企業等とのビジネスマッチング事業https://lne.st/2025/06/02/ibaraki-6/)に取り組んでいます。僕らは東南アジアのベンチャーを茨城県にお連れする中で、企業の誘致という意味合いだけでなく、地域の産業作りという側面もあるのかな、と思っています。ちょうど10月にはベトナムのベンチャーAlternō(以下、アルテルノ)が茨城県に拠点を設立するということもありました(https://lne.st/2025/11/07/vt-alterno/)。青山さんご自身は、どういう思いでこの事業に取り組まれているのでしょうか。どのような問題意識を持っているのか、事業紹介とあわせてお聞かせください。

茨城県 青山悠:私の紹介をさせていただきますと、茨城県の水戸市出身、地元の県庁職員です。ただ、県庁職員ではありますが、経済産業省と外務省で合計7年間勤務経験があるなど、キャリアの多くを国で過ごしてきました。そうした国での経験を踏まえて、現在は、グローバルな視点からの地域経済の活性化、更に言うと、海外の活力をいかにして地域に、ひいては日本全体に取り込むか、という視点で国際戦略を推進しております。

茨城県は、地理的に東京に近接しており、工場立地面積は2015年から2024年まで全国1位、県外企業立地件数も8年連続で全国ナンバーワンです。ビジネス環境が恵まれている証拠として、一人当たり県民所得も東京、愛知に次いで全国3位となっており、ポテンシャルがあるだけでなく、それが数字に表れていると言えます。

そうした中、私たちが今注力しているのは、単なる大企業の誘致だけではありません。「ゼロイチ」、つまり海外企業に最初のファーストステップをいかに踏み出してもらうかという支援に重きを置いています。県内の大学や研究所、企業との共同研究に対する支援制度や、拠点を構える際のスタートアップビザ制度、そして補助金まで、ファーストステップから拠点設立まで一貫した支援を行っています。その結果、ベトナムのアルテルノさんと地元の菊池精機さんとのコラボレーション、そして、つくば市のアルテルノの拠点設立に至るという、着実に実を結び始めているところです。

塚田:ありがとうございます。そのベトナムのアルテルノが、地元のいわゆる中小企業である菊池精機と「モノづくりを一緒にやろう」ということで拠点を設立したということですが、環境の素晴らしさもさることながら、青山さんが一番ポテンシャルとして感じている部分はどこでしょうか。

青山:やはり海外の、特に東南アジアの企業にとっては、日本のモノづくり企業とコラボレーションすることに非常に価値を見出しています。そういった中で我々としては海外の活力を取り込み、県内企業とWin-winの関係を作ることが、新しい産業や更なる活力を生む道だと信じています。人口減少社会において、過去の延長線上には未来はありません。「現状維持は後退だ」と私は認識しております。

茨城県 青山 悠 氏

■日本の製造業の真の強みは「再現性の高いモノづくり」にある

塚田:ありがとうございます。では、実際に海外ベンチャーから「モノづくりを一緒にしたい」という要望があったとき、現場では何が起きるのか。KOBASHI ROBOTICSの稲田さんに伺います。小橋工業さんは100年続く農業機械メーカーですが、近年はスタートアップの製造支援に力を入れていますよね。

KOBASHI ROBOTICS 稲田和也:はい、弊社は岡山のいわゆる中堅企業で、100年以上続く農業機械事業と、およそ6年前にスタートした「モノづくり支援事業」という2つの事業を行っています。モノづくり支援事業では、設計から量産化までモノづくりの中で必要なことは何でもサポートしています。5、6年ほどで、相談件数としては300社、支援としても50社以上というところで、たくさんのお声掛けを頂いています。また2020年頃から海外企業との連携を本格的にスタートし、今ではおよそ20社を超える東南アジアの企業に岡山に来ていただいています。

Also,KOBASHI MONOZUKURI STANDARDでは、リバネスさんと一緒に海外のベンチャーの方に向けて、日本のモノづくりとは何だということを伝える教育的な活動もしています。100年来のモノづくりの知見を凝縮させた教育プログラムを、リバネスと共同でつくり、さらに私たち自身が実際に海外に出向いて、海外ベンチャーに直接伝えにいっています。この中で大まかに2つの気づきがありました。1つは、モノづくりの課題は日本でも海外でも変わらない、同じところで壁にぶち当たるということ。もう1つは、日本の製造業の強みは再現性が高いモノづくりができるというところです。

これはジャパンクオリティとか、品質が高いという言葉で言われますが、単にものを作れるというだけではなくて、図面やドキュメントをしっかり作り込み、誰が作っても同じ高い精度で完成させられる。この「再現性を高めるノウハウ」こそが、海外ベンチャーが最も求めている知識なんです。このノウハウを、海外のベンチャーに日本に来て知っていただき、そこから海外にもう一度出ていくというインバウンドグローバライゼーションは、日本の製造業に相性がいいんじゃないかなと思います。

KOBASHI ROBOTICS株式会社 稲田 和也 氏

■現場で発生する「文化のズレ」を「すりあわせ」で乗り越える

塚田:海外の方とモノづくりをしようとすると、「この図面って成立するんですか?」といったズレや、見積もりのギャップが生まれることがある。詰めれば詰めるほどズレが出てきて、そこで停滞してしまう。その時、どのように乗り越えているのでしょうか。また、モノづくり企業が海外企業とコラボレーションをする際に必要なマインドセットなど、稲田さんはどういう形で対応されていますか。

稲田:正直なところ、すごく難しい問題だと思っていますし、解がすぐに出るものではないんですけれども、これはもう、すりあわせを何度もするしかないと思っています。

例えば「図面が必要だよ」と話をしても、やっぱり今までやったことがない人には伝わらないので、どうしても壁はあるかなと思っています。でも、そこは諦めずに、何度も話をしながら「何のためにこのドキュメントが必要なのか」という認識を合わせていくしかありません。これは国内のスタートアップとの連携でも同様ですね。

塚田:国内スタートアップと組めないのだから、海外スタートアップとはなおさらだ、という声もあります。ただ、我々としては諦めたくない。日本のモノづくりに魅力を感じていただいていることがやはり重要であり、このすりあわせ力というところが日本の強みといえるでしょう。ここで金融庁の島崎さんから、こういった動きを加速するために、国としてのとりくみを紹介していただきます。

島崎:国内企業と海外企業のコラボレーションの先にある「出口」についてお話させていただきます。東証では、海外から日本にきてビジネスを行う企業の出口としてのIPO(新規株式公開)をちゃんと支援しようという動きになってきています。金融関係などが連携した「スタートアップ・ハブ」を作り、アジアのスタートアップ企業を選定して支援しています。アジアの企業が日本を拠点に上場し、さらなる世界進出を果たす。日本がその「ハブ」になり、そのプロセスで中堅・中小企業が連携できると、日本企業にとっても新たなビジネスチャンスになると思います。

そのためには、もし、各自治体や金融機関が「自分の県の中だけで完結させる」という考え方をもっているとすれば、その考え方だけをもつ必要もなく、地域を超え、国境を超えた出会いの場をどう作るか。今、リバネスさんがやろうとしているような「ブリッジ」の仕掛けは、停滞を打破するためのキーワードの1つとなると思います。

■「試しにやってみる」を増やせ:知識製造業を日本の新しい戦略とするために

塚田:ありがとうございます。では最後に、知識製造業を日本の新しい戦略としていくための壁の乗り越え方について、お考えをお聞かせください。まずは青山さんからお願いします。

青山:はい。私は、壁は突破するものだと考えております。概念としては皆さんに賛同するところですが、そこは実際にアクションとして起こしていくことが大事です。具体的には、茨城県だけじゃなくて、例えば地元金融機関や県内関連機関等と本当の意味で有機的に連携し、なおかつそれぞれが同じ方向を向くようにしっかりコミュニケーションをすること。そして、海外企業と県内企業とのマッチングにあたっては、我々がしっかり汗をかく。うまくいかないところをうまくマッチングさせる立場としてやっていきたいと思っております。

塚田:壁があっても逃げるな、と。やるべきことを皆でやっていきましょう、ということですね。ありがとうございます。では、稲田さんにお伺いします。

稲田:雑な言葉なんですけど、まずは試しにやる企業がいっぱい増えるというのが一番重要だと思っています。日本の製造業で新しいことにチャレンジする会社は結構少なくて。中堅企業でスタートアップのモノづくり支援をやると、いろんな会社と付き合っていくことになり、自社の強みがわかってくる。強みは相対的でしかわからないので、まずやってみない限りはわかりません。

その強みがわかったら、それが言語化できます。言語化できると、「自分たちはこういうところが強いから、誰かやりませんか」という仲間集めができるんですね。自分たちから探すのではなく、来てくれる会社が増え、コラボレーションがどんどん生まれる。これも「まずはやってみましょう」でしかないかなと思います。

塚田:ある意味、動いたら景色が変わってくる。それを繰り返すことでより良い方向に向かっていくのではないかと。最後に島崎さん、お願いします。

島崎:私自身は個別のビジネスをするプレイヤーではありませんが、世の中の人たちの考えの中にこの知識製造業という考え方が入っていくようになる、というのがすごく大事だと考えています。つまり抽象的ですが「良い事例として広める」ということです。立場の壁を超えて、「それって何なの?」とか「どうすればこれが広がるのか」みたいなディスカッションを引き続きできるといいのかなと思いました。

塚田:ありがとうございます。まさに、一度世界から知識が日本に集まり、それを一緒に形にしてまた外に出ていく。その結果、付加価値が上がって、それがちゃんと地域に還元されていくという世界観があるのかなと思っています。最後に、ご来場いただいている皆さんに一つだけお約束いただきたいと思います。海外からお越しいただいている方々がいます。ぜひ一言、声をかけてみてください。皆さん一人一人がインバウンドを受け入れる立場になるということが、知識製造業を日本の産業にしていくための、最初の一歩です。それでは、本日のご登壇、誠にありがとうございました。

 


Ibaraki prefecture (Kantou area)
営業戦略部 国際渉外チーム グループリーダー
Mr. Yu Aoyama

He joined the Ibaraki Prefectural Government in 2007 and was seconded to the Ministry of Economy, Trade and Industry (METI) for 3 years from 2012, where he was in charge of designing and operating the system of subsidies for corporate location in the affected areas for the reconstruction from the Great East Japan Earthquake. After returning to the prefectural government in 2021, he will utilize his experience at the central ministries and overseas to work as a diplomat to revitalize the local economy from a global perspective. After returning to the prefectural government in 2021, he is currently promoting international business operations from a comprehensive standpoint, including planning of international strategies, acceleration of investment in Japan policy, and top sales promotion by the governor overseas, in order to revitalize the local economy from a global perspective.

KOBASHI ROBOTICS Co.
知識製造部 スペシャリスト
Mr. Kazuya Inada

国内自動車メーカーにて、エンジニアとして触媒開発、組み込み制御開発、ハイブリッド車の適合業務などを経験。その後、国内コンサルティング会社にてコンサルタントとして大手製造業向けにDX構想検討、企画支援、開発業務プロセス改革支援などを経験。

Financial Services Agency
Counselor, Policy Bureau
Mr. Seio Shimazaki

Counselor at the Financial Services Agency's Policy Planning and Promotion Department, serving as Director of the Planning and Promotion Department of Kumamoto Prefecture from 2014 to 2017, where he worked with Kumamoto University, Higo Bank, Kumamoto Industrial Association, and RIVANES to foster real tech startups. In particular, he launched the Kumamoto Tech Planter, the first of the "Regional Tech Planters" currently spread across 12 regions, with RIVANES in 2016. From 2017 to 2020, he served as Director of the Second Banking Division, Supervisory Bureau of the Financial Services Agency, where he was in charge of regional banking administration. He is currently in charge of the Innovation Promotion Office of the Financial Services Agency, which operates the FinTech Demonstration Lab and the AI Public-Private Forum.

LIVERNESS Corporation
Executive Officer
Shuhei Tsukada

D. in Applied Biotechnology, Graduate School of Agricultural and Life Sciences, The University of Tokyo. D. in Agriculture. Participated in the management of RIVERNESS since 2003, when the company was in its early stages of establishment. After accumulating practical experience in experimental classes and various types of writing, developed and introduced advanced technologies in the agri-field and launched a project to build an ecosystem for regional startups. He is committed to technology and business development in collaboration with major and medium-sized companies, venture companies, and researchers with a hands-on approach.

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