
海外展開を考えたとき、「まず国内で事業を固めてから」「人員が揃ってから」「海外向けの事業計画ができてから」と考えてはいないでしょうか。
もちろん準備は大切です。しかし、私たちがこれまで東南アジアを中心に多くの企業と海外展開に取り組んできた経験から言えば、計画が完成するのを待つよりも、まず現地に行ってみることが重要です。海外で事業をつくるために必要な情報の多くは、日本にいながら調べるだけでは手に入りません。
今回は、ベンチャーが海外展開を進めるうえで大切にしたいことを、**「現地を見る」「仮説を試す」「事業をつくる」**の3つに分けて紹介します。
い:現地を見る
海外展開の最初の一歩は、課題の現場へ行き、一次情報を得ることです。
食品やフードテックであれば、市場やスーパーを歩いてみる。商品がいくらで売られているのか、どのような表示がされているのか、どのような環境で流通しているのかを見る。農業であれば農地へ、ものづくりであれば工場へ、医療であれば病院へ行く。
現場を見ることで、日本で当たり前だと思っていた前提が簡単に崩れることがあります。
例えば「交通渋滞」という一つの課題をとっても、その原因は国によって違います。車そのものが多い国、道路構造に特徴がある国、交通ルールの運用に課題がある国、現在はバイク中心でも今後の経済成長によって車が急増しそうな国。同じ言葉で表される課題でも、実際に現地へ行かなければ、その背景までは見えてきません。
だからこそ、事業計画が完全に固まっていなくても構いません。むしろ、仮説しかない段階だからこそ現地を見る価値があるのです。
ろ:仮説を試す
現地へ行く前には、「この国ならこの製品が売れるのではないか」「この大学と共同研究ができるのではないか」といった仮説を持っていきます。
しかし、実際に行ってみると、その仮説が外れることもあります。それは失敗ではありません。
海外展開で大切なのは、最初から正解を当てることではなく、小さな仮説をできるだけ早く試し、仮説検証を繰り返すことです。
そのためには、さまざまな人に会うことも重要です。
政府機関であれば、その国が掲げる産業政策や国家戦略を知り、その実現に自社の技術がどう貢献できるかを考える。大学であれば共同研究の可能性を探る。企業については、一見すると競合に見える相手にも会ってみます。
以前、水上ドローンを開発する日本企業とマレーシアを訪問した際、現地の水中ドローン企業との面談を設定しました。分野は近いものの、実際に話してみると技術は補完関係にあり、現地企業が日本企業の製品を展示会で紹介するところまで関係が発展しました。
「競合だから会わない」のではなく、何が同じで、何が違うのかを確かめること自体が仮説検証になるのです。
また、東南アジアでは人材の移動も活発です。組織との関係だけでなく、意気投合した担当者個人との関係を大切にしておくことで、その人が別の組織に移った後、新たな連携につながることもあります。
は:事業をつくる
現地を見て、仮説を試したら、次はそれを事業の形にする段階です。
誰が顧客なのか。誰が対価を払うのか。日本で製造するのか、現地で製造するのか。販売は自社で行うのか、現地パートナーと組むのか。大学との共同研究から始めるのか、PoC(実証実験)から始めるのか。
海外展開とは、単に日本で売っている製品を海外へ持っていくことではありません。現地で得た一次情報をもとに、誰が、何を、どう提供し、どこで収益を生むのかという「お金の流れ」を組み立てることです。
そして、私たちが海外渡航で特に大切にしているのが、名刺交換だけで終わらず、「次の一歩を決めてから帰る」ことです。
最初の面談で大きな契約を結ぶ必要はありません。NDA(秘密保持契約)、LOI(意向確認書)、MOU(覚書・連携協定)、PoC(実証実験)など、その時点で次に進むための約束を一つでも具体化しておくことが重要です。
そのためには、渡航前の準備も欠かせません。面談のアジェンダ、提案資料、プロトタイプやサンプル、価格、PoC(実証実験)の期間や条件など、完全でなくてもよいので仮説を持っていく。準備した仮説があるからこそ、現地で具体的な議論ができます。
こうした積み重ねの先に、PoC(実証実験)、共同研究、LOI(意向確認書)、MOU(覚書・連携協定)、さらには現地法人設立といった具体的な成果が生まれてきます。
海外展開は、完璧な計画書をつくってから始めるものではありません。
現地を見る。
仮説を試す。
事業をつくる。
このサイクルを何度も回しながら、ぼんやりしていた海外展開を、具体的な事業へと変えていく。
Global Bridge Programでは、国や地域を超えて知識・技術・人材を橋渡ししながら、企業とともにその最初の一歩をつくっています。
まだ海外向けの事業計画が完成していなくても構いません。
まずは、課題の現場に足を運ぶところから始めてみませんか。